手食の世界・3...手食のマナー


小さい頃の ”何ですかー 手づかみで−− お行儀悪い−−”なんて母の声も、耳に残っているが、私たち日本人は、中東や西アジアの人々が手つかみで食事している光景をテレビなどで見て、箸民族の自分たちがより上等と多少とも優越感を覚えていると言ったら、否定出来ないだろう。

 しかし、手づかみで食べるからいって、不潔であるとか野蛮であるかと考えてはならないという。手づかみの食事をする地域では、食前、食後に手を洗う習慣をもつ場所が多い。誰が洗ったかわからないナイフやフォークを使うのと自分で洗った手の指とどちらが清潔であるかは、決めがたいことだというのである。

 イスラム教やヒンズー教の国では、食べものに触れるのが許されるのは右手に限られる。用便の始末に使う手である左手は不浄の手とされているなど、細かいマナーが決められている。北アフリカイスラム圏では、五本指で食べものを手づかみするのは、いやしい食べかたとされ、親指、人指指、中指の三本の指の先端だけを使って食べるのが上品な食べかたとされるのである。