りんごの摘果(てきか)

りんごの摘果という作業がある。信州各地のりんご農家はその季節になると家族総出でおおわらわ。開花のときもするが 小さな実がなった時にも行う。摘果は、間引き、いわばおろぬくわけで、ひとつの花からからなったいくつかの実の中から育ちのよいものを残す。

 必ずしなければならない作業で、しかも一定の時期内に済ませてしまわなければならないので、りんご農家にとっては手のかかる大変な仕事である。

この作業をちょっとでもやってみると、一本の木さえ全部もれなく摘果するというのも実に大変なことだとわかる。脚立を使ったり枝先に登ったりしての作業。少し遠くからみると、摘んでない実が残っているのがわかるけれど、その場所当たりに近ずいてみると、これがどこだかわからなくなるのである。これをくまなく捜すのも実に根気のいる作業なのである。パケット車を導入している農家もあるが、摘果のもれを防ぐため何回かに分けてやっている。

ところで、私たちの生活や仕事のなかにも、これに類することがよくあるなと、自然の比喩にクスッっとしてしまうのである。 日々の雑然、喧騒のなかにばかりいると、大局、大きな流れがわからない。といって離れてばかりいては、細かい事象、真の姿をつかみきれない。 只々、日常性の中にだけ埋没するだけでなく、スタンスをかえてものをみる考えるという必要があるなと痛感している。