氷餅(こおりもち)・その2、氷餅のつくり方、食べ方

 氷餅、その作り方というのは、方法自体はいくつかあるようだが、ついた餅をその日の内に小さめの長方形に切り、一個づつ新聞紙で包み、つり下げられるよう藁で編む。これを一〜二昼夜水に漬けてから、日陰の軒先などにつるしておくと日中は氷がとけ、夜は凍る。この繰り返しで水分が次第に蒸発乾燥し、一ケ月くらいで真っ白くカサカサした氷餅が出来上がる。

 薄い幾重もの餅の層が雲母のように積み重なっている。またもち米の粉を煮て型に流し固める方法もあり、これに砂糖の衣をかけると初霜と呼ばれる上品な和菓子。諏訪・松本地方で市販されている。
 
 松本市街を見下ろす薄川(すすきかわ)沿い。入山辺の伯父の家の離れで暮らしていた頃、寒空の軒先につるされていた氷餅や凍み豆腐の光景を覚えている。その頃は、松本平や諏訪湖周辺・佐久地方のたいていの農家では氷餅を作っていたのだろうが、今は作っている農家も滅多にない郷土食。

 では、氷餅はどんな味がするのだろう。凍み豆腐はまあそのままでは食べられない。また餅は、焼くか煮るか電子レンジでチンしなければ食べられない。しかし氷餅はそのままバリバリとおいしく食べられる。兵糧や携帯食になったゆえんである。

 −−口に含むと、素朴な香ばしい味とほのかな甘みがあって、ほろほろと溶けていく。お湯をかけるとやわらかくなるので、砂糖醤油やきな粉をつけて食べる。−−(農文協刊「聞き書 長野の食事」)

 我が家ではお湯で戻してトロリとさせ砂糖をかけて食べるのが普通だった。離乳食や病人食、また子供のおやつやお茶受けにしても喜ばれた氷餅。お湯で戻すと餅の粘りを100%でないにしても取り戻すが、その味わいは「餅」とはやはり違がうものである。