信州の昆虫食・その4、信州蜂の子物語・1


 昭和63年の夏、信州の珍味、蜂の子の缶詰「蜂の子花九曜煮」を製造する諏訪市の原田商店に、全国から注文や問合せが殺到した。この昭和63年というのは、昭和天皇がお亡くなりになった前の年。

 その年の7月のはじめ、ご病床の陛下が手術後、食欲があまりなく、缶詰の蜂の子をまぶしたご飯を好んで食べている、と週刊誌等が報道したためである。

 昭和天皇が、もうはるか50年以上も前、昭和22年の行幸で宿泊された松本市の郊外(当時は入山辺村)の霞山荘で、はじめて蜂の子を食べられ大変気に入られた。それ以来、この蜂の子の缶詰は宮内庁に納められている。このニュースで、蜂の子は世に広く知られ、信州の珍味として市民権を得たのだという。