氷餅(こおりもち)・その1

 先日、松本地方の伝統的な雛人形を見学するために馬場家住宅というところに行った。住宅などと名前がついているが、旧家をそのまま博物館にしたものである。その軒先に氷餅(こおりもち)(写真)が吊り下げられていた。今は見かけることが少なくなった懐かしい郷土食である。

 餅といっても凍った餅のことではない。製法のイメージは凍み豆腐(氷り豆腐・高野豆腐)と同じであるが、わが信州でも特段に冬寒い諏訪・松本・塩尻・大町・佐久地方など作られた。広辞苑には −−多く、信州・東北地方で作る..と書いてはあったが。もっとも長野県でも北信や飯田地方の人は知らない人もいるだろう。福島県では、凍餅(しみもち)と呼ばれているようである。

 氷餅は元禄年間に大町で発明されたという記録もあるというが、よく知られて有名なのが諏訪・高島藩の氷餅。ここでは三代将軍家光公の時代から幕府に献上されていたという。藩の独占で、氷餅部屋と呼ぶところだけで作られ、藩主や藩士も食べたと思われるが、庶民の製造は禁じられていたとも。(長くなるので続く)