「信濃なる千曲の川の細石(さざれし)も 君し踏みてば玉と拾はむ」、「今日の出会いきのう出会い」

 
 私の好きな万葉集・東歌の相聞歌、「信濃なる千曲の川の細石(さざれし)も 君し踏みてば玉と拾はむ」である。 長野県の東信から北信を流れる千曲川の名が、歴史上の文献に最初に現れるのは、万葉集の巻14の3400、東歌(あずまうた)の信濃の国の歌、相聞の4首の一つのこの歌といわれる。
 
 むろん万葉集の原文は仮名交じり文ではなく、万葉仮名といわれるものだが、漢字のみ。

信濃奈流 知具麻能河泊能 左射礼思母 伎弥之布美手婆  多麻等比呂波牟

 この歌実にいい。現代の私たちにもわかりやすい表現。女性から男性を思って詠んだ歌のようである。とても気に入っている。

  ”信濃の国を流れる千曲川の小石も、愛しいあなたが踏まれた石ですもの宝石のように大切にしましょう..” 私は、夫か恋人か遠く、都の警備か西国の防人に旅立つのを見送って作ったのかもしれないと思った。

  もっともこういうのは現代風の解釈で、国語学者 大岡信さんはその著書の中で.次のように解している。−−”信濃千曲川の小石でも、あなたさえ踏んでくださるなら(踏ん私のもとへ通ってくださるなら)宝玉と思って拾いましょう。”川向こうにすむ男から求愛された女が、喜んで承知したのだろうと。その意を伝えるのに川砂利と いう素材を使っているのが、いかにも実感がある。−−写真は、千曲川河原、東御市海野宿付近。

 「今日の出会いきのう出会い」
 安曇野三郷、ギャラリー自遊館で個展を開いていた池田会染窯の篠田明子さん。取材撮影したSDカードが不具合になり、この画像はタウン情報から借用。(18日)