「信濃なる千曲の川の細石(さざれし)も 君し踏みてば玉と拾はむ」・その2

  むろん万葉集の原文は仮名交じり文ではなく、万葉仮名といわれるものだが、漢字のみ。

信濃奈流 知具麻能河泊能 左射礼思母 伎弥之布美手婆  多麻等比呂波牟

 この歌いい。現代の私たちにもわかりやすい表現。女性から男性を思って詠んだ歌のようである。とても気に入っている。

  ”信濃の国を流れる千曲川の小石も、愛しいあなたが踏まれた石ですもの宝石のように大切にしましょう..” 私は、夫か恋人か遠く、都の警備か西国の防人に旅立つのを見送って作ったのかもしれないと思った。

  もっともこういうのは現代風の解釈で、国語学者 大岡信さんはその著書の中で.次のように解している。−−”信濃千曲川の小石でも、あなたさえ踏んでくださるなら(踏ん私のもとへ通ってくださるなら)宝玉と思って拾いましょう。”川向こうにすむ男から求愛された女が、喜んで承知したのだろうと。その意を伝えるのに川砂利と いう素材を使っているのが、いかにも実感がある。−−写真は、千曲川河原、東御市海野宿付近。