飯饐(めしす)える、饐飯(すえめし)って、ご存じですか?

 近ごろ暇のある毎に取り出しては眺めている講談社版「カラー図説・日本大歳時記」。夏の巻を見ていたら、飯饐(めしす)える、饐飯(すえめし)というのがあった。飯が饐える、すなわち悪くなりかける状態である。最もこんな言葉も当節では死語に近いのかもしれない。この飯饐(めしす)える、饐飯(すえめし)について、私のメールマガジン「郷愁の食物誌」の最近号に書いたところ。

 歳時記の解説には、−−夏の暑さがひどくなると、飯びつに入れたごはんは汗をかいて、臭気を放つようになる。これを「飯饐える」というとある。麦飯はとくに饐え方が早いという。

 これを防ぐために、おはちに布ふきんをかけたり、竹の飯びつに入れて、涼しいところに吊したりする。饐えた飯は水で洗って水飯にして食べたり、ちょっと饐えの程度が進んだのは、洗濯糊にされたが,少し匂いが残ったものだ。

 少々匂いがあるくらなのは母は良く炒り飯に..。あのご飯の饐えた匂いや感覚は、良く食べさせられた水飯や炒りご飯とともに、もはやはるかなる郷愁の世界のものである。冷蔵庫が普及した時代に育った今の若い世代は、むろん饐飯というものの存在も飯びつ(単におひつといっていた場合が多い)も知らないだろうが、俳句の季語としては残っている。「飯饐える そんな言葉も 死語になり」