白鳥が 去った水面(みずも)の 空虚かな

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 白鳥飛来地、信州安曇野・白鳥湖、白鳥やカモの北帰行が続いている。先ずは北北海道の中継地、クッチャロ湖や稚内の大池へ向けての移動で、最終的に北の大地、繁殖地の北極海沿岸の原野に渡るのは5月に入ってからだとは前にも書いた。それならば、もうすこし越冬地にゆっくり留まっていても遅くないと思うのだが、日が長くなり暖かい南風でも吹くと、DNAに刻み込まれた渡りの血が騒ぎ、じっとしていられないらしい。

 渡りが終わるのが3月中だったり、4月も半ばになったり、年によって違いはあるが、いづれはみごとに1羽残らず去ってしまう。陽光あかるく、岸辺の柳も萌えてきて、あたりの空気も春という感じだが、白鳥など、主がいなくなった水面は、水音だけ、静寂が支配、寂寥感に満ちている。
白鳥の 去った水面の 哀しさよ 柳目吹きて 陽水(ひみず)ぬるむも