あんぱんが好き・5、思い出あんぱん・1

 1964年(和39年)の東海道新幹線開通・東京オリンピックあたりを境に、日本では急速に広範囲な生活分野においてものが豊富になったという。パン屋の品そろえも実にバラエティに富み、世界のさまざまなパンが店頭に並ぶようになった。菓子パンもそれまでは、伝統のあんパン、クリームパン、ジャムパン、それに揚げパンなどが中心ではなかったろうか。しゃれたデニッシュ・ペーストリーなどが販売されるようになったのは40年代の後半からという。

 また、トレイにとって大型のピンセットのような挟みで棚に並んでいるパンを挟みとり、パンを自由に選ぶ方式があらわれたのもこの時代。 ハンバーガーショップが出現する以前、都会のサラリーマンなどは、駅の売店などであんパンと牛乳を買って食べ、それを朝食がわりにしていた人も多かった。

 もっとも駅やプラットホームまた映画館の売店で売っているパンといえば小さめなあんパンを5ケくらい詰めた袋のものしかなかった。列車の中でも”おせんにキャラメル、あんパンに牛乳...”と確か言って移動販売していた。いってみれば、あんパンはそういうところで売っているパンの定番だったわけである。