郷愁のバナナ物語・1

 今の若い人たちにはとうてい理解しがたいことかもしれないが、バナナは、かつて、団塊の世代以上には一種、あこがれ的な果物であった。そして高価な果物の印象が強かったが、今はもう「な〜んだ..バナナか!」的存在になってしまっている。一房、5〜6本ついたもので200円以下。最も安い部類の果物である。

 昔々、入院見舞いや土産などに、たいそうな果物篭に詰め合わせて持って行って、喜ばれたものである。その篭の中でもバナナは主人公であった。今は実際のところ土産に持って行く人はなかなかいないだろう。
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 おいしく、栄養価も高いバナナ。それ自身は少しも悪くないのに、この相対的価値・ありがたみの低落はどうだろう。今のこどもにおじいさんおばあさん(もうお父さん・お母さんではない)のこどものころの ”あのバナナを腹いっぱい食べたい”というバナナへの強い思いを、いくら説明してもそれは無理かもしれない。