信州蜂の子物語・3、蜂の子取り



 蜂の子取りは、各地方ではスガリ、スガレ、地蜂(ジバチ)などと呼ぶ学名クロススメバチの巣を野原で見つけ、その蜂の子を採集することである。この蜂は、水ハケのよい地中に何層もの巣を作る。このハチの巣を取るのはこんな具合だ。

 −−棒の先などに、カエルやマグロの生肉を取りつける。これに細く伸ばした真綿をつけておくと、蜂は好物の肉をくわえ、真綿をフワフワさせながら巣に向かう。白い真綿を目印にこれを追いかけるわけである。野越え、やぶを突っきり、それこそ足もとを見ず、薮バラに手や顔をひっかけようが穴ボコでころんですりむこうが、ひたすら飛ぶ蜂を追いかける。

 そして巣を発見すると煙硝や花火で蜂を麻痺させる。その蜂がショックを受けている間に巣をそっくり頂くという寸法である。何人かの協働作業になるが、苦労して苦労して、蜂の巣を見つけた時のゾクゾクとする喜びうれしさというものは、やったことのある者にしかわからないものかもしれない。

 伊那谷ではどの職場やクラスにも、地バチ追いの名人が一人や二人いたものである。あまりに名人が多すぎて、今ではあまりとれなくなっているとか。隣の県などに遠征しているという話も聞く。