芥川也寸志とショスタコーヴィチ・その4


 「今のお仕事は?」
 「新しい11番目の交響曲を、出来れば夏までに書き上げます。これは1905年の革命のうたが主題になっています。この頃はどうも体が疲れて仕方がありません。だから、仕事は朝から5・6時間しかしません。朝はものを考えるのに一番よいように思います。」

 ショスタコーヴィチが続けて語ることには、仕事はたいてい朝の6時からはじめ、午後は作曲以外の仕事、夜は演奏会に出掛けることも多いという。

 「あなたは筆が速いので有名ですが...。」の問いに、調子の良い時は。新しいスコアを20〜30ページは書くと言う。そして、作曲にはピアノは使わないとも。その方が音楽を深く考えられるような気がすると語る。
 
 音楽の話題になって、二人の会話は実にぎこちなく、彼の表情と話しぶりは相変わらず落ち着きがなく、まるでスポークスマンのそれで、とても自分のことをしゃべっている人の顔とは思えなかったと、芥川は書いている。