DVD映画「浮雲」を見る

 この映画の封切りは1955年(昭和30年)だから、見たのは直ぐでないにしても中学か高校時代のことになる。それなのに印象深くずうと忘れられない映画である。たまたま図書館のライブラリーにあり借りて来て見る。実に**年ぶりに。

 覚えているシーンは伊豆かどっかの温泉旅館くらいなのだが、離れられない宿命的な男と女のただれた退廃的な愛の物語というイメージを持っていた。監督の成瀬巳喜男、主演の高峰秀子森雅之にとって生涯の代表作というようである。林芙美子原作を映画化。

 若い岡田茉莉子も出演。内容も暗く見ていて滅入って来るが、バックの時代世相も暗い。撮影日時が戦後の当時に近いので荒れたモノクロームの画面と合いまってよけいリアル感がある。

 −−瀟洒な台詞。無駄が無いカット。男と女の淪落をあれほど美しく描いた映画は他に知りません。仏印ダラット・東京・伊香保屋久島の風景が匂い立つかのような描写。高峰秀子の清冽な美貌や圧倒的な演技力と、森雅之の鬱屈としていながら何処か飄々とした雰囲気が素晴らしい。森雅之演じる富岡は顔から言動までまるで太宰治にそっくり。岡田茉莉子のクールビューティーぶりも印象に残ります。−−と感想をネットにUPしていた人も。