とんでもない温泉・その1

 小説家エッセィスト清水義範氏の作品に「秘湯中の秘湯」というのがある。日本全国各地の秘湯中の秘湯を紹介しているのだが、実はこれは秘湯というよりとんでもない温泉ばかりなのである。

 秋田県にあるという風呂湯温泉は、よく蛇も入りにきていて、時には湯船が蛇で覆われていて、その蛇をかき分けて入らなければならない。

 山形県の迷子谷温泉というところは、谷底にあるという露天風呂へ行くのはいいのだが、行きはよいよい、帰りは怖い。山道が複雑に入りくんでいて迷子になり、宿に容易にたどり着けない。

 宮城県にあるという死急(しにいそぎ)温泉には、その名前にもぎょっとするが、温泉成分にかなり強度の硫酸を含んでいて、長時間入っていると体が溶けてしまう。慣れた人でも1分がせいぜい。よく見ると湯面には昆虫や小動物の死骸が。宿のすぐ横はごていねいに墓場になっている。

 写真は、信越県境、燕温泉の山奥、無人(だから無料)の露天風呂・河原の湯、脱衣場などはないし男女の別もないし、混浴。