おにぎりおむすび物語・2 きなこむすび

 もうひとつ思い出すおにぎりの味がある。おやつに母がよく作ってくれたきなこむすび。砂糖と塩でほどよく味付けされたきなこの味は、おにぎりのごはんによくあった。田舎そのもの味のようで懐かしく思いだされる。

 そのきなこむすびはどういうわけか、まん丸のボール形だった。きなこむすびを葬式の時に出す地方もあるというが、信州では農家のおこひる(お小昼)のおやつである。特に五月中旬の田植えどきのおこひるに出る例が多いと、信濃食物誌(信濃毎日新聞社刊)に紹介されている。

 なお、おむすびは宮中からきた女性語ともいわれるが、また地方によって呼び方が変わるともいうが、今はほとんど混同して使われている。