川の向こう岸から見た景色

 長野市に住んでいた頃、家の近くに、千曲川にそそぐ浅川という川があった。

 川幅は10メ−トルちょっと。その浅川にもう一つの川が合流している。その落合に小さな中州が出来ている。

 ある時、その中州におり立って、こちら側を眺めたことがある。そしてそこから見えた景色の意外さに驚いた。言葉にはちょっと表現しにくい。こちら岸から見えるその中州は、確か数メートルは低いが何も変哲もない景色なのに。

 少年の頃、松本市郊外の美ケ原高原よりの入山辺村桐原というところに住んでいた。(現在は松本市内)美ケ原高原に源を発する薄川(すすき川、奈良井川に注ぐ)下流松本市内側)からみて左側の斜面が桐原、右側の斜面が南方・橋倉の集落である。

 毎日、反対側の斜面である橋倉・南方をみて暮らしていたわけだが、ある日初めて、向こう側へ行って、向こう側からこちらの桐原をみて、それはびっくりした。

 向こう側からはこんなふうにみえていたのかと。こっちの方ずっと高いと思っていたのに、まったくその逆だったし、思いもかけない景色であった。(写真は、松本市山辺区南方・橋倉集落)