森田童子(もりたどうじ)のレクィエム

 山崎ハコについて、一昨日書いたので、森田童子(もりたどうじ)、彼女のことも書かねば...。

 いつものぞく古本屋で、「偏愛的名曲事典」(斉藤慎爾著・三一新書)という本を見つけ、ぱらぱらとめくっていたら、−−森田童子が歌う吐息のような青春の鎮魂歌『ラスト・ワルツ』−−なんて項目がありびっくりした。
 
 この本は別にクラシックの名曲ばかりを紹介した本ではないが、裏表紙にあるキャッチコピーによれば、−−氾濫する音楽の洪水の中で、いま何を聴くべきか!バッハ、モーツアルトから武満徹、一柳彗、美空ひばり中島みゆき森田童子から無名のシンガーソングライターまで。名曲・秘曲の大饗宴(シンフォニー)−−、というわけで著者の独断と偏見的選曲で必聴の名曲を紹介している。
 
 斉藤慎爾(さいとう・しんじ)さんははじめて聞く名前の方であるが、私も大ファンである伝説のシングソングライターの森田童子の曲が、モーツアルトベートーヴェンの曲に伍して紹介されているのが無性にうれしかったのである。

 著者は言う、森田童子が歌う吐息のような青春の鎮魂歌『ラスト・ワルツ』。息を呑むような美しい旋律。それは深い疲労の翳りをにじませ吐息のように歌い出される。宴の終わりに、青春の終わり、時代の終わりを象徴させていて見事である。ラストは、過ぎ去った往時を歌手自身が偲ぶかのように、この曲が自らの青春へのレクイエムということだろう、と...。
  
 森田童子は、1975年から1983年のわずか9年間、活躍したいわば伝説・謎のシンガーンングライター。ライブハウス中心に活動し、知る人ぞ知るテレビなどとは無縁なシンガーだったが、その歌とスタイルは学生を中心に若者に強烈なインパクトを与え支持された。巨大な黒色テント劇場での公演など、今も語り草という。いつも黒ブチの大きな色メガネをかけ、素顔を決して聴衆に見せなかった。

 とめどもなく暗く、滅入る歌を歌うシンガーと私が呼んでいた同じ70年代のカルメン・マキ、山崎ハコ、浅川マキ、石川セリなどと比べ、今思うと最も存在感があり、歴史的な意義意味合もあったのは森田童子だと強く感じるのである。

 森田童子の当時のCDがほしい、何枚かは持っているのだが、今や超レア、お宝級、*万円もの値段がついていてちょっと手がだせない。