ヨーロッパの光、日本の光

 印象派の画家たちの作品がなにより私たちをとりこにしてしまう魅力は、色づかいで光と空気を描いている点だと、友人で画家、わが松本のアーティスト岩淵龍王丸さんはいう。

 私たち凡人の目には、光は明るい、暗いの違いぐらいにしか見えないが、世界を旅してさまざまな風景、風物、生活を目にこころに焼き付けて来たアーティストには、私たちが気がつかないでいる光が風物に微妙な輝きと陰を与えているのが見えるのだろう。

 「ヨーロッパの光と日本の光は違う。」と、私も龍王丸さんに聞いたことがある。それに北欧と南欧の光も当然のごとく異なる。北欧の微細な光の中で生まれ育まれた透き通るように白い若い女性の肌を表現することは至難なことだと。
 
 ゴーギャンの描いた南緯20度近くの南の海に浮かぶ島、タヒチの光もまた違っていて、それは作品の色づかいからわかるとか。印象派の画家たちの色づかいには、学ぶことがいっぱいあって、特に光を引き出す黒を注意してみると勉強になることを示唆してくれるということのようだ。

 「ヨーロッパの風景画と日本の風景画の大きい違いは、日本の風景画には人がいないことだ。」とも龍王丸さんは指摘するが、また日本の風景画には空気があまり感じられない、それは人物と生活が入っていないからで、それが入ってこそ自然なのではないかと。

 絵の中に人の息づかいが聞こえ、ぬくもりが伝わり、より深い人と自然とのかかわりが画面から伝わってきて、はじめて空気の存在を感じるのではないだろうか。それがまた作品を見る者と画面との間に空気のあることを意識させるのだとも...。