空手還郷(くうしゅげんきょう)


 宋での留学修行を終え、日本に帰った僧・道元が残した言葉らしい。友人の書家・山内清香さんの作品展示でこの言葉のあるのを初めて知った。

 ネットに出ていた「つらつら日暮らしwiki曹洞宗関連用語集)」には、−−訓読すれば「空手にして郷に還る」ということだが、直訳すれば素手で故郷に帰ること。道元禅師が日本に帰ってきた際に発した言葉だとされているが、その典拠は『永平広録』−−、と載っていた。

 また別のウェブでは、山内清香さんも同様の解説をしていたが、−−単純に解釈すれば、仏法の真髄は会得したから、もう参考書は必要なく、中国の経典などは何も持ち帰らなかった、ということだろう。道元が日本に帰るときに経典などを持ち帰らなかったのは事実だったかもしれない。しかしどうも隋、唐、宋と続いてきた中国との交流のなかで道元は、すでに入宋以前の経典、公案(後日あらためて言及したい)等は日本国内で読破、吸収していたかに思えるとも。

 山内さんはまた、「空手還郷」とは、経典や仏像の輸入を目的としていた平安時代初期の中国留学とは異なり、まさに自分自身の体得してきた仏法以外に何ものもないことを意味しているのではないか、とも説明していた。写真は、作品、「空手還郷」の前で解説する書家の山内清香さん。