”お嬢さん、ありがとう”

 もう、**年前のことだろうか、職場のなにかの打ち上げ、食堂で皆とビールをしこたま飲んで、いつもは車で10キロ程の道、酔い任せ、自転車で夜風に吹かれ、しかしややのぼりもあり、また道のりが道のり、いささかフーフーいいながらペタルを漕いでいた。

 あれっ? どうも後ろの方から声がする。自分のことかな、「すみませーん」と聞こえた。うっ..と思って、しばらくはまた漕いでいた。また、「すみませーん」今度は振り返った。若い娘さんが、なんと自転車の私を追いかけていたのだ。「あぁっ、百メ−トルも走っちゃった..。」顔を上気させて彼女が言う。

 キーホルダーを、私がポケットから落としたのを、知らずにどんどん行ってしまったのを、彼女が追いかけてくれたのだった。
 「ありがとう、ありがとう」 思わず、彼女をぎゅっと抱きしめたいほどうれしかった。(そうはしなかったが..^^)このおじさんの私のために、100メ−トルあまりも追いかけ、必死に走ってくれたなんて..。
 
夜目に上気した彼女の顔は、とても美しかった(としておこう..。)