とんでもない温泉・その3

 小説家エッセィスト清水義範氏のいわば温泉のパロディ版。

 わが長野県には泥沼化(どろぬまか)温泉というのがある。泥の温泉なのだが、泥は泥でも底無しの泥沼温泉。そのままではズブズブと入っていってしまい二度と地上の空気を吸うことはできない。そのため入浴客は腰から脇の下にロープをしばりつけ、湯の際の木にしっかり結びつける。なお足首にロープを結んだりするともう大変。逆さづりになって復元することは無理になるという。木に結び付けられたロープを切るなどは御法度。

 ところでこの温泉は、長野電鉄寝返(ねがえ)り駅からバス30分、土肥中(どいなか)から道に迷ってあてどなくさまようこと2時間にのところにあるという。JR長野駅をターミナルとする長野電鉄などと書いてあるので、思わず地図帳も持ってきてまじめに探してしまった。無論、寝返駅という駅は長野電鉄には存在しないし、従ってこれらの温泉が作者の空想の温泉、温泉のパロディ版だということがわかる。

 そのほか大都会の真ん中に湧出した恥晒(はじさらし)温泉(愛知県)、シャワーのように温泉の雨が降る湯雨(ゆあめ)温泉(大分県)。北極に近いシベリアにあるオユ湖温泉というのは、湖全体が温泉というすごさ。それぞれの温泉には温泉ガイドブックのように、交通・泉質・効能・宿も
面白おかしく紹介されていて楽しめる。

 写真は飛騨・高山の温泉。露天風呂から市街を一望。