餅々考現学、餅は丸いか四角いか?


  師走も半ばである。あまりピンとはまだ来ないが正月も近い。”もういくつ寝るとお正月...”なんて懐かしい歌もあったが、お正月といえば昔からお餅、今は年中あるのであまり感慨はない。

  ところで、昔々、高校を終えて京都へ出て行き、住んだ近くの公設市場へ入ってびっくりした。なんと売っているもちがみな丸いのだ。鏡もち・お供えもちならまだわかる。お供えもちにしては小さく平べったい。”なんで〜〜”という感じだった。

 どうやって作るのだろう。機械で形を打ち抜いてもまるめるという作業はあるだろうに。なんとも能率が悪そうだが。出会ったたいていのことは忘却の彼方にある遠い昔のことなのに、強い印象に残っているのは、おおげさにいえばカルチャーショックみたいなものだったのだろう。

 もちは丸いか四角いか、俗にに西日本では丸もち、東日本では切りもちいう。雑煮にも西日本では小型の丸もちをそのまま入れるが、東日本では焼いた切りもちを使う。

 もちは古来丸いものだった。原形は丸い鏡もち。それは神前への供えものであり、今も昔も祭事や晴れの日の食べものである。古くは<モチイイ><モチイ>といい、モチは望月(もちづき)のモチとだともいわれる。

 鏡もちはもちを丸くまるめ、鏡になぞらえたのである。江戸時代の「成形図説」という本に、「歳首に餅を製して鏡餅というのは、日神(天照大御神)が天の岩戸にこもられたとき、鏡を作りたてまつり祈ったところ、再び岩戸が開いて、世の中が明るくなった故事によるもので、新春のはじまる元日を祝ってつくものである」と記されているという。(1回では書ききれないので続く)