どこまでも追いかけていきたい衝動とベートーヴェン

 
  10年に1回か、5年に1回か、また2年に1回か、街など歩いていて、車を運転していて、ハットするような美しい女性に出逢うことがある。もっとも美しいなどということは、主観的なことだから、誰にとってもということではないが、インスピレーションか稲妻に打たれたように強く曵かれる女性ということである。

 今、おこなおうとしている目的など放棄して、この女の人について行きたい追いかけてみたいという激しい衝動にかられることがある。多くの場合、実際の行動は起こさないのだが(あるいは現実的には起こせないのだが)、そういう後はなにかもやもやした不完全燃焼したような、ほろ苦い想いが残るのである。

 わが敬愛するベートーヴェンも若い、美しい女性は大好きだった。(当たり前か......)ウイーンの街角で、郊外の田舎道で、美しい若い女性とすれ違った時など、後ろ姿が見えなくなるまで、よく立ち尽くしては眺めていたともいう。

 そんなベートーヴェンの様子を実際に見聞した弟子のフェルデナント・リースもその著作で「...(ベートーヴェンは)女性を眺めるのが大好きだった.」と書いているという。