では、西(にし)は...


 日本語で、東を”ひがし”といい、西を”にし”と言う。同じように”みなみ””きた”。このように呼ぶようになったのには、それなりの理由がある。前回も述べたように、別に中国から伝わってきた訳ではない。確かに後から伝来した同じ意味の漢字、東西南北は語彙を大幅に豊かにしたと思われるが。

 一昨日はは東(ヒガシ)について触れたが、今回は西について見てみよう。西を表現する言葉については、インド・ヨーロッパ諸語には三つの把握の仕方があるという。一つは、「太陽の沈む方向」「夕方」、二つ目は、東を「前面」する逆として「後」として捉えるもの。その三は風による名付けであるという。

 その一の例としてラテン語のoccidensは「落ちる」意で、太陽の没する意であり、ギリシャ語のesperaは「夕方」の意であるという。二の例としては、サンスクリット語の西、praticihahaは「後ろ」の意味、三の例ではプレトン語のkornogは「西風」の意味であるという。
 
 日本語のニシは、「去方」(イニシ)の訳であろうという。イニが去(イ)ヌという動詞の名詞形で、シは方向を示すので「日没の方向」の意で西を捉えた語というわけである。南と北については、別の機会にふれてみたい。